■物質もコミュニケーションしている?
この共鳴現象は、何と生命界のみならず物質界でも観察されている。
一八世紀に天然樹脂から液体のグリセリンが抽出されたが、当時この液体は科学者たちのあらゆる努力にもかかわらず、いっこうに結晶化しなかった。やがてグリセリンの結晶化は不可能で、個体のグリセリンは存在しないとされた。
ところが二〇世紀に入ってから、こんなことが起こった。
オーストリアからイギリスへと運ばれたグリセリンの一部が、その途中での温度・振動などの偶然の条件が重なったことにより、自然結晶をしていたのである。その結晶を手に入れた科学者たちは次々とグリセリンの結晶化に成功した。
その中のある科学者の実験室で異変が起こった。
彼がグリセリンの結晶化に成功したとたん、同じ部屋の中にあるグリセリンのすべて、密閉容器に入っていたグリセリンまでが、自然発生的に結晶化をはじめたのである。しかもそれはいつのまにか全世界まで広がっていったのである。つまり何の情報伝達手段も持たないように見える物質同士が、あたかも互いに学習し、模倣したかのような行動を起こしたのである。
目に見える世界だけでなく、ミクロの世界でも同じような現象が起こっているようだ。
一九三五年、アインシュタインは同僚のローゼン、ポルドスキーとの連名で、ある論文を発表した。量子力学に対立していた彼らは、量子力学の解釈が正しいとするならば、きわめて不合理な結論が導き出されると主張した。
その不合理な結論とは、二つの粒子A、Bがたとえ何の情報伝達の回路も見いだされない遠く離れたところにあったとしても、実験者が粒子Aの状態を変えると、それによって瞬間的に粒子Bの状態に影響を与えることになるというものである。これを「EPRパラドックス」という。
自然はなぜこのような不思議な現象を用意したのだろう。