■地球と人間の健全な関係



 さて、そろそろまとめよう。私たちは今まで、次のような新しい世界認識の方法論を見てきた。

 

何の情報伝達手段もないように見える離れた二つの生命体や物質が互いに影響し合い、その影響がある臨界値を超えることによって爆発的に広がるということ

 (「コンティンジェントシステム」あるいは「形態形成場」)。

地球もひとつの生命体であり、私たち人間と同じように恒常的な生命維持活動(ホメオスタシス)を営み、私たち人間のネットワークは地球の脳ともいうべき「グローバル・ブレイン」を形成する可能性があるということ(「ガイア仮説」)。

私たちの目に見える部分として立ち現れる現象(「開かれた秩序」)には、それを超越した、より根源的レベルにある全体性(「織り込まれた秩序」)が、あたかもホログラフィ写真のように投影され内包されているということ(「不断の全体性」)。

人間の脳もホログラムとして機能しているということ、そしてDNAの不断の全体性を考えるなら、一人の人間を構成する細胞ひとつひとつも一種のホログラムであり、さらにそこへ「ガイア仮説」をあてはめるなら、人間も地球のホログラムとして機能し得るということ。

個体発生のプロセスと地球生命の進化のプロセスの相似性、あるいは人間の脳に残る原始の部分を見るなら、人間はその内側に全地球の歴史を織り込んでいるようにも思えるということ。

 

 地球と私たち人間の関係は、互いが互いのホログラムでありながら、そうした地球に対し、あたかもそのホメオスタシスを破壊するような、いわば人体にとってのガン細胞のような振る舞い方をするような関係に成り下がっているようにも見える。そうした振る舞いはそろそろ真剣に見直さなければならない時期にきていることは議論を待たないだろう。

 その一方で、環境問題に取り組もうとする活動家の中には、自分の生活や健康、社会との健全な関係や幸福の追求といった、いわば自分自身の生命体としてのホメオスタシスを犠牲にしてまで地球環境の立て直しに貢献しようとする者もいるようだ(かくいう私にもそういう時期があった)。

 しかし個の振る舞いが時空を超えて他に直接影響するなら、そして部分に全体が織り込まれているとしたら、個のホメオスタシスの破壊は、全体のホメオスタシスに直接影響をおよぼす、あるいは織り込まれた秩序を破壊すれば、開かれた秩序も破壊されるだろうということは容易に想像がつく。逆にいえば、個のホメオスタシスが健全に維持できれば、おのずと全体のホメオスタシスも回復してゆくに違いない。

 個人個人が内側に全地球を抱え込みながら(Think Globally)、なお地球に対してどのような役割を担っているのかに気づき、それに逆らわずに無理せず行動すること(Act Locally)。それが来るべき新世紀の「扉」を開き、地球という生命体を新たな進化の段階へとめざめさせるカギになることは間違いないだろう。