蚤とライオンの関係は、大自然の中で日々繰り返されている命の営みであると同時に、われわれ一人一人の人間の中でも同じように繰り返されている個人的な営みでもある。ミクロとマクロは呼応し合っている。

ライオンにとっての蚤とは、とるにたらない程度に自分の身体から養分をくすねていき、その代わりにいくばくかの痒みを残していく、ちょっとやっかいな存在とも言えるし、とても比較にならないほどの巨大な存在に対し、そこを住処とし、その存続を危うくしない程度に戦利品を奪い取って共存をはかる勇敢な戦士とも言える。

そこには勝者も敗者もない。支配も隷属もない。和解もない代わりに対立もない。ただ奇妙なバランスがあるだけだ。