愛はいつから対象を必要とするようになったのか。それはおそらく、愛がエロスとプシケーに分けられたときからだろう。エロスが存在そのもののあり方を示すのに対し、プシケーは神が人間にもたらす行為を示す。そのときから、愛は与え奪うものとなった。人はなぜ愛をエロスとプシケーに分けたのか。それは神の絶対性を人々に信じさせ、教会の絶対的権威を保持するためである。神が唯一絶対の善であるために、悪魔の存在が必要であり、教会が絶対的な権威であるために魔女狩りが必要であったのと同じ理由で、憎しみや恨みといった向かっていく対象をもつ感情をいさめる必要から、それと対立する概念として、対象をもつ行為としての愛が創り出されたのだ。