painted by Anthony K.

幼な子は そのとき はじめて知る
夢が 教えること
幼な子は 手の中の 笑顔が
なぜか なつかしい

いとしいわが子 わかっていたわ
こんな 日がくると
幼ない おまえの 胸の中が
私には よくわかる

いとしいお母さん どうか教えてください
あの人は 今ごろ どこで何を
わたしを 覚えてる



あたたかな 陽だまりに 包まれて
少女は 目覚める
あたたかな まなざしに 守られて
少女は 目覚める

あの人はどこ きっと出会える
心 ときめかせ
あたたかな まなざしに 見送られ
少女は 旅立つ

あの人はどこ きっと出会える
心 ときめかせ
あたたかな まなざしに 見送られ
少女は 旅立つ
一人 旅立

母親は 幼な子を 胸に抱き
涙で 頬をぬらし
母親は とまどう 幼な子に
そっと 打ち明ける

いとしいわが子 どうか許して
こんな 母親を
その人は おまえの 父親よ
今でも 生きている

いとしいお母さん どうして嘘をついてたの
幼ない わたしを 胸に抱いて
父は 死んだはず



母親は 色あせた 写真を
箱から 取り出し
母親は とまどう 幼な子に
そっと 差し出す

いとしいわが子 これが私の
ただ一人 愛した人
あたたかな まなざしを 投げかけて
うでには 赤いバラ

いとしいわが子よ あの日のことは今も胸に
幼ない おまえを 一人残し
あの人は 出て行った

あたたかな 陽だまりに 包まれて
幼な子 目覚める
あたたかな まなざしに 守られて
夢から 目覚める

あの人は誰 ひげを生やして
うでには 赤いバラ
あたたかな まなざしを 投げかけて
うでには 赤いバラ



幼な子は やさしい 母親に
そっと ささやく
幼な子は とまどう母親の
耳に ささやく

あの人は誰 夢に出てきて
うでには 赤いバラ
幼ない わたしを 胸に抱いて
うでには 赤いバラ

いとしいわが子よ どうして夢にその人が
幼ない おまえを 胸に抱いて
うでには 赤いバラ

「薔薇の刺青」