■人間が地球に果たす役割とは



 考えただけで、ワクワクしないだろうか。

 人間に意識があるように、地球にも人間の意識の集合体としての、より高次の意識があり、人間の脳が神経細胞の結合によるネットワークの複雑化によって発達する(つまり頭がよくなる)ように、地球も、人間一人一人を脳神経細胞として、その情報ネットワークの複雑化によって進化するというのだ。

 この「ガイア仮説」に基づくならば、人間という生命体を構成するひとつひとつの細胞に(この細胞は血液の一部を構成する、この細胞は神経伝達を司るなど)生命維持のための明確な役割があるのと同じように、この地球上のすべての生命も、地球という巨大な生命体を存続させるために、それぞれある明確な役割を担っていて、人間の細胞どうしが有機的につながっている(つまり他と無関係に孤立して存在しているのではない)のと同じように、ひとつひとつの生命は、有機的な関係で影響し合って生きていると考えることができる。

 地球はひとつの生命体であり、地球上の生命も物質もそれを構成する要素であると考えるなら、手のツボを圧すと肝臓が反応するとしても、アメリカがくしゃみをすると日本がカゼを引く(今や逆か?)としても、あるいは物理的に離れたところに存在する同種の生命や物質が同時多発的に進化とも呼べる現象を引き起こしたとしても、驚くには値しないだろう。

 私たちひとりひとりの人間が、地球という生命体を構成するひとつひとつの細胞として、地球の恒常的生命維持活動(ホメオスタシス)にどう貢献できるのか、地球に対してどのような役割を担っているのか、そのことに気づくことが、地球という生命体を進化させめざめさせる第一歩かもしれない。それは決して難しいことではない。

 たとえば、インターネットに代表されるような、昨今の情報ネットワーク技術の加速度的な発達も、グローバル・ブレインの脳神経細胞の結合状態を肥やし、臨界値を超えて地球をめざめさせるためのコンティンジェントシステムの発動と考えられないか(あるいはすでに臨界値を超え、地球はめざめているか)。

 そう考えると、老いも若きもこぞって携帯電話や電子メールなどのあらゆるメディアを駆使して、取りつかれたように自分の周辺のみならず世界中の人たちとつながり、相手の思考を瞬時にして自分の脳細胞ネットワークの一部として取り込もうとする試みは、あたかも脳神経細胞が、隣の細胞と電気信号を交換すべくシナプスをしきりに伸ばしている姿にも見える。

 そしてその試みを促すものは、単なるニーズや便利さや好奇心でなく、ユングが言うところの人類共通の集合無意識から発露された生命プログラムの一貫であるように感じられてならない。